《MUMEI》
5.神殺しの青龍
その時がきた!
羅刹が必殺の突きを放つためにさらに一歩を踏みこむその瞬間。
まさに肉を斬らせて骨を絶(た)つ!の諺(ことわざ)のごとく、おのれの左耳を斬り飛ばさせながら、敵の内懐に飛び込んだ白虎の剣先が捉(とら)えるのは、黒い鎧の心臓部!
剣先が黒い鎧に放射状の亀裂を走らせながら、奥深く潜り込んでいく。
「ぬうーーっ!!」
羅刹の顔に初めて焦りの色が浮かんだ。
体を大きくのけ反らせながら、全身の筋肉をぎりぎりとたわめて飛び退(さ)がる。
砕けた鎧から裸の胸が覗く。
そこに付いた赤い点が見る見るうちに丸く膨らむと、一筋の血の滴(しずく)が伝い落ちていった。
「やったー!」
天狗丸とダキニが思わず叫ぶ。
「俺の・・・・勝ちだ」
左耳のあった穴から血を滴らせながら、荒い息を吐いて白虎が言った。
「なかなかの太刀筋。剣の師匠は誰だ?」
羅刹の声には素直に感嘆の色が滲んでいるように見えた。
「青龍!」
「なるほど・・・・『神殺しの青龍』か・・・・」漆黒の目にも納得の色が浮かんだ。
だがすぐにその顔に皮肉な笑いが戻り、
「ところで言い忘れていたが、この戦いは三回勝負だ・・・・」
その言葉に、
「何だと!」
白虎が絶句した。

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