《MUMEI》 「はあ?何それー?」 「単なる負けず嫌いかよ」ダキニと天狗丸も思わずずっこけた。 羅刹もさすがに少し気まずいのか、表情だけはクールなまま、 「まあ聞け、人間よ。正直今まではお前を嘗(な)めてかかり、本気を出していなかった部分がある。剣の道に生きる者としては恥ずべき油断。 卑劣者と罵られてもしかたない。甘んじて受けよう。しかしお前が、あの神一族を恐れさせた唯一の人間『神殺しの青龍』のまな弟子と知り、その剣の冴(さ)えを見せられた今、剣の道を極めん者としては、今一度本気で立ち合ってみたくなったのだ」 「わかった!その代わりこちらも条件がある! どちらが勝とうが負けようが、朱雀の安全は保証しろ!」 「御意!」 「え?え?羅刹兄ぃー?!勝手に話を進めないでくれよー」 アスラの不満の声もどこ吹く風と、ふたりの決闘者はすでに対決の姿勢に入っている。 白虎は黄金に輝く剣を 右八双に構え、羅刹は何を思ったか剣を鞘に納めると柄に手をかけたまま腰を落とす。 いわゆる居合抜きの構えである。 しかしこれは白虎の攻撃を待つ態勢であり、この勝負が一瞬で決着がつく事を暗示していた。 決闘者の間でじりじりと気の圧力が高まる。 この圧力が臨界に達した時、壮絶な爆発が起こるだろう。 その時、 (白虎!白虎よ!) 死んだはずの青龍の声が響き、白虎は体を硬直させた。周りでは不思議な事が起きていた。 羅刹が腰を落としたまま、彫刻と化したように静止している。 振り返ると、同じように凍りついたような姿で ニヤつくアスラの横に、青い炎のような光に体のラインをふちどられて、青龍が佇んでいた。破れ衣に杖をつき、腰まである白髪をなびかせて、鋭い眼光を放つ眼で白虎を睨みつけている。 時の止まった世界の中で、「お師匠様!」思わず叫ぶ白虎に、 (今こそ第七のチャクラ、サハスラーラ・チャクラを開くのじゃー!) 白虎だけが存在を認識している青龍のアストラル体が、稲妻のように瞳を光らせて叫んだ。 その瞬間、白虎の心は遠い過去へ飛んでいた・・・・。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |