《MUMEI》

「俺が別れを切り出したのは・・・別に好きな人が出来たから。」

「・・・そうなんだ。好きな人かー。」

「あぁ。好きでもないのに付き合ってるとか相手に失礼だと思って・・・」

その言葉が胸に突き刺さった。何でだろう・・・?今の自分に言われている気がした。

いつぐらいからか・・・

私は悠斗の方に気持ちが動いていた。正直別れたって聞いてチャンスだと思っていないと言えば嘘になる。

でも和輝がいる。

この時の私は自分の気持ちに素直になれませんでした。

それからしばらく和輝と逢わなくなった。和輝はいつも「愛佳の話聞くから。」

そう言って一緒に学校行くことも帰ることも断られた。

―1月14日―

和輝の誕生日の前の日でもあり、私達の8カ月の記念日の前の日だ。

プレゼントはもう買っていた。

大みそかはお互いの家族と過ごし初詣は陽奈と廉もいたからこの日が久しぶりの2人きりのデートだと思った。

4カ月前には「和輝の誕生日一緒に迎えようね。」って約束していた。

「今日どうする?」思い切って私は和輝に連絡した。

♪〜♪〜

思ったより返信は早かった。

「今日は家に愛佳が来てる。だからごめん。明日一緒に学校行こ。」

・・・私より愛佳なの?和輝なら幸せにしてくれるって悠莉さんは言ったけどそれは間違いみたいです。

私はあてもなくただ家を飛び出して走っていた。この時の私は泣いていたのだろうか。しばらく走って着いたところはあの土手だった。

夕日がとてもキレイだった。「全部分かってるよ。」そう受け止めてくれそうなくらい優しい明りだった。

「リィ?」まただ。いつも私を見つけるのは悠斗。悠斗は犬の散歩中だったのだろう。

「・・・悠斗。」悠斗は私に何があったのかを察知したかのようにジョーンズ(悠斗の犬)に話しかけた。

「ジョーンズ、お前は泣いてばかりだな。辛いこといっぱいあるけど泣いてたって何も始まんねー。お前には俺がついている。俺じゃ頼りねーか(笑)。でも、俺

はいつもお前の味方だ。」

悠斗はジョーンズではなく私に言っているのだろう。そう思うとおかしくてつい笑ってしまった。

「リィ、何笑ってんだ?」

「悠斗、ありがと。」私は思いっきり笑った。悠斗も笑い返してくれた。

でも悠斗、私には和輝がいる。和輝を大事にしたい。例え和輝が私を好きでなくても・・・。

―翌日―

私の家の前に和輝がいた。

「理香、昨日はごめん。」

「いいよ。これ、誕生日おめでと。」

「ありがと。これ、俺から8カ月の記念にって思って。」照れくさそうに下を向いて言った。

「覚えていたんだ。ありがと。」

ぶっきらぼうな字で「理香へ」と書かれた包装紙の中にはマフラーが入っていた。

嬉しくて涙が出てきた。

「理香、気に入らなかったか?」

「違う。大事にする。嬉しいよ。」

お互いがすれ違って失ったパズルのピースを丁寧に埋めていく。またあの頃に戻れると私は信じていました。

私が和輝の手を離さなければ、それでいい。そのはずだった。

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