《MUMEI》 空席の不幸立っているのも辛くて銀色のポークにすがりつき 涙目で息を整えていた芹奈は ふとドアの近くに一人分の空席を見つけた。 神サマ〜! 奇跡だ!これでちょっと楽になれる! ほっとして腰を下ろした、その瞬間だった。 「んま――――――ッ、ずうずうしいっ!!」 攻撃的な大声にビクッとした。 えっ、なに?私のこと……? 顔を上げると、目の前にちょっと 化粧が濃い小太りのおばさんが、蔑むような表情で立っていた。 何が起こっているのかわからなかったが おばさんが不愉快に思っているのは自分なんだだということはわかった。 「まったく最近の子は、席を譲ろうって気はないのかしらっ!? 若いくせに楽にすることばっかり覚えちゃって 信じられないわっ!どういう神経なのかしらっ!やーねーっ!」 おばさんが座ろうとしていた席を自分がとってしまったんだと 理解する間もなく、おばさんは畳みかけるような早口で言う。 そのかん高い声は車両中に響きわたって 乗客が「なんだ?」と芹奈とおばさんに注目した。 前へ |次へ |
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