《MUMEI》 6.スサノオ時が動き出したのを感じる。 それと同時に青龍のアストラル体が己の内に滑り込むのを、白虎ははっきりと感じた。 「どうしたのだ人間? いや白虎よ・・・・。 お前の全身全霊を込めた魂の一撃を、早くこの俺に打ち込んでくるのだ・・・・」 羅刹が闇が凝り固まったような漆黒の目を細めて言った。 白虎の中で気の圧力がぐぐーっと高まった。 羅刹の顔に不審の陰が過(よ)ぎる。 明らかにそこに今までと違う異質な『気』を感じて。 その時ビュンッ!と空気を裂いて、羅刹と白虎の間の大地に矢が突き立った。 弓を持った天使があどけない顔でくすくす笑いながら、宙を浮遊している。 羅刹が一瞬それをちらりと見て、「ちいっ!」と舌を鳴らした。 天使の顔に瞬間、意地の悪そうなシワが寄ると、身を翻(ひるがえ)した姿が、上空で輝く眩しい光球に吸い込まれていった。 光球は中性的な美しさを持つ長身の若者の姿に 変化(へんげ)する。 「羅刹殿。その人間は私の獲物。すぐに引かれよ!!」 羅刹は居合抜きの姿勢を 崩さず、 「最高神ゼウス様の息子のあなたと言えど、これは魂を賭けた真剣勝負!口出し無用!」 きっぱりと言った。 「逆らうか!」 天照大神アポロンが美貌に不快なシワを寄せて降下して来ると、その前方に割り込むものがある。 「小僧。何の真似だ!?」 「てへへ。羅刹兄いもああ言ってる事ですし、ここは一つ穏便に・・・・」逆立った青い頭をかきながら、困ったような顔でアスラがアポロンを見上げている。 「すぐにそこをどけ、ちびめ!」 「んだと、こらあっ!!」途端にアスラが眉間にしわを走らせ、アポロンを睨み上げた。 瞬間湯沸かし器である。「調子こいてんじゃねーぞ!ゼウス様の息子だか何だか知らねーが、お坊ちゃまは神殿の広いお庭で、優雅にティータイムでも楽しんでろって言ってんだよ!」 「愚弄(ぐろう)するかーっ!小僧ー!えーい、邪魔だー!どけーい!」 珍しく激昂して焦れたようにアポロンの腕が、数千度の熱量を持ったまま宙を薙(な)いだ。 アスラが素早く身を沈めそれをかわすと、前方に突き出した両手から雷電をほとばしらせながらアポロンに迫る。 たちまち光球に変化した二つの塊が、空中でもつれ合うように、時々ぶつかり合って互いに火花を散らしながら、ぐんぐん上昇していく。 「何だぁ?仲間割れかよ」 天狗丸は呆れてその様子を眺めた。 その時!白虎が雄叫びと共に動いた。 前へ |次へ |
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