《MUMEI》 「二郎聞いてるか?」 七生が呼びかけてきた。 前の席の人も交えて昨日のバラエティ番組の話をしていたんだ……。 「うん。」 七生が覗き込んでくる。明るくて、明る過ぎて苛立ちさえ沸く親友の七生だ。 この間の七生は幻想だったのかな。 熱っぽい視線、それと比例する皮膚の体温、平熱を越して溶解しかけた唇……。 まるで未知の感覚だった。 怖かったはずなのに 忘れられないのはどうしてなんだろう。 「最近、上の空なこと多いよな」 東屋に指摘された。上の空?俺が? 「まさか。」 俺に限って。 前へ |次へ |
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