《MUMEI》

『 裂!山!剣ーーっ!』白虎の喉を借りて漏れるは、白虎と青龍の二人の声が重なった雄叫び!!
黄金の刀身から同じ輝きを放ちながら、巨大な光のブーメランがほとばしる。



ドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!



土と泥を巻き上げ、大地を穿(うが)ちながら
溝が一直線に羅刹へ向かって突き進む。
それは行く手にあるどんな物をも斬り裂かずにはおかぬ、黄金の光だ。
羅刹は腰を落とした姿勢で、鞘に納めた刀の柄に手をかけたまま、自分に向かって来る凶暴な破壊の光の波を見つめる。
そのこめかみを汗が伝い落ちた。
羅刹の喉から、
「でぃやああーーーっ!!!」
裂帛(れっぱく)の気合いがほとばしると、鞘から抜かれた刀が銀色の光を走らせながら、上方へ跳ね上がった。
銀色の刀身は黄金色のエネルギーにぶち当たると、それを弾き飛ばした。
「まだだーーっ!!」
羅刹の眼に空から刀を振り上げて落ちてくる白虎の姿が映る。
「ぬうーーっ!!」
刀の柄を逆手に持ち替えると、今度は逆方向から上に向かい斬り上げる。
だが次の瞬間、白虎の黄金の刀が羅刹の右肩に食い込むと、羅刹の肉体を斜めに斬り裂きながら胸の真ん中当たりで止まった。
「ぐはっ!」
羅刹は口から血塊を吐き出すと、心底嬉しそうな笑顔を浮かべ、白虎の両の頬を血まみれの手で挟み、言った。
「白虎よ・・・・、久しぶりに心の底からときめいたぞ・・・・」
睨みつけている白虎の顔をゆっくり自分のほうへ引き寄せると、くちづける。
「ありがとう・・・・」
羅刹は言った。
白虎の唇の端から、つつーーっと血の滴が伝い落ちた。
白虎には下半身が無かった。
羅刹の体に食い込んだ刀で支えられ、宙に浮かんだ上半身から、ぼとぼとと内臓が地上へこぼれ落ちていく。
羅刹はまた血を吐き出しながら膝をつくと、白虎の肩を掴み押すようにして、自分の体内の刀身を抜き出した。
白虎の上半身が仰向けに
地上へ投げ出され、羅刹も両手を地上についた時、「白虎ーーっ!!」
「羅刹様ーーっ!!」
二人の女、朱雀とカーリーの悲痛な声が、ほぼ
同時にほとばしる。

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