《MUMEI》

羅刹の負傷を目撃して動揺したために、拘束の力がゆるんだのだろう。
その隙をついてカーリーの手を振りほどき、朱雀が飛び出した。
「逃がさないよ!」
カーリーの声と共に五本の光の筋が走ると、次の瞬間、朱雀の体はばらばらに四散する。
頭がごろごろと白虎の側へ転がって来ると、顔のほうを向け眼の前で止まった。
その美しい顔に涙が一筋流れ、何かを言いた気に唇を開く。
だが、それも果たせず命の無い物体と化した。
白虎は仰向けのまま成す術も無い。
(朱・・・・朱雀ーーっ!!)
叫びも声にはならず、ただ血の塊が口から大量にこぼれ落ちるだけだった。。
「うう・・・・ひどいよー」
ダキニが天狗丸の肩に顔を埋め、天狗丸もさすがに言葉を失って沈黙した。
「兄きぃーっ!」
「羅刹様ーっ!」
駆け寄るアスラとカーリーに、
「カーリー、余計な事を・・・・」
羅刹が苛立だし気につぶやいている。
アポロンも事のなりゆきに憮然とした面持ちで、空中からこの惨状を見下ろしていた。

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