《MUMEI》

「なんだか樹は変わった。
私に少し感情を見せてくれてる、本当は起伏が激しいんでしょう。何だか嬉しいよ。」
樹のベッドで若菜は最後の靴下を履いている。



「俺は若菜のこと全然解らない。捕まえる前に指から滑り落ちてゆく」
隣に腰掛けて若菜の髪を指で梳いた。毛先が柔らかいので掌から零れ落ちる。




「私は樹が好き。これだけは揺るがない。貴方を愛する女がいる、それでいいじゃない?

樹が変わっても好き、誰を好きだろうと愛し続けるよ……。」
若菜は樹の肩にもたれて唄うように話した。



「俺は変わらない。」


「そうかな?明るくなった。すっきりしたみたい。
友達も増えた。斎藤君と仲良くなってよかったよ。」



「変わってない、そういうのじゃない……俺には若菜だけだ」
樹はアラタに隷属すると誓った。足の小指はまだ癒えていない。

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