《MUMEI》
Alice
ねぇ?
貴方には見える?
真っ白い長い髪に真っ白い服、さらに真っ白い靴。
頭の先からつま先まで真っ白い女の子なの。
でもね、大きな瞳だけは真っ赤なの。
それでね。
懐中時計を持っていてまるで不思議の国のウサギみたい!
あの子は私を不思議の国へ連れて行ってくれるのかしら?
〜Alice〜
「ねぇ、あそこに真っ白い人がいるよ?」
1人の少女が目を輝かせてビルの間を指差して言う。
「何言ってるの?そこには何もいないよ?」
けれど隣にいる友達は不思議そうに少女の言うことを否定する。
「今日の鈴ちゃん変なの〜。」
そう言って友達は笑う。
「だっているんだよ?あそこに・・・。あれ?」
鈴はそう言ってもう一度ビルの間を指差す。
けれどそこには誰もいなかった。
「ほら、鈴ちゃんの見間違いだよ。早く帰ろう。」
「・・・うん」
鈴は友達に促されるまま家路についた。
その後姿を真っ白い少女が見ていることも知らずに・・・。
†
その後鈴は行く先々でその少女を見るようになった。
少女はまるで鈴を待っているかのように・・・。
「あの・・・」
鈴がおずおずと話し掛ける。
「り・・・」
「?」
「やっぱり貴方。私のことが見えるのね。」
少女が言う。
その声はまるで悲しみが宿っているかのように・・・。
「当たり前でしょ。他の人だって貴女のこと見えているはずよ?」
「他の人に私は見えないの。私のことが見えるのは私と同じことを
考えている人・・・。」
少女が淡々と言う。
その言葉に少女の目が輝く。
「じゃあ!貴女は、私を別の世界に連れて行ってくれるの!?」
「いいえ。」
少女が即答する。
「違うの?」
「えぇ。貴方がその場所に行ったら、後悔しか残らない。」
しょんぼりする鈴に向かって少女は言った。
そして続ける。
「じゃあね。」
「待って!!」
鈴が少女を呼び止める。
「何?」
少女が止まり振りかえる。
「私も連れて行って!」
「駄目よ。」
「後悔なんかしない!」
「駄目。」
「何で!?」
「貴方はココに存在していなければならないから。それに・・・」
「?」
「私は貴方になりたくないわ。」
少女はそういうと悲しそうな笑顔を見せて消えた。
その後鈴は白い少女を見なくなった。
†
「あら、亜里須。帰ってきたのね。」
声が白い少女に言う。
「あたりまえでしょ?」
「もう帰ってこないかと思った。」
声が楽しそうに言う。
「私はアイツと違うもの」
亜里須も楽しそうに言う。
そして時計を取り出し、目の前にゆらゆらと揺らしながら続ける。
「それに、私の世界はここだしね!」
「そう。それを聞いて安心したわ。」
声は相変わらず楽しそうだ。
そして時計をしまい亜里須はポツリと言う。
「それにアイツに会わない限り私はこの世界の住人でいないと・・・。」
「そんなにあの世界が好きだった?それとも身体?」
声が真剣な口調で聞く。
「どっちも。でも、私はやっぱりこの世界が1番ね!私に1番あっ
ているわ。時間も、日にちも関係ない。それに、歳をとらない」
亜里須は満面の笑みで声に言う。
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