《MUMEI》

「大丈夫?」

桜子は美海の前に座り込んで

教科書を拾った。

「あの…えっと……」

「あぁ、私は愛川 桜子」

「あっ、私は……」

美海が自分の名前を言いかけたが

桜子はそれをさえぎって

「黒崎 美海ちゃんでしょっ?」

と、笑ってみせた。

すると美海は手を止めて

こちらをジッと見つめてきた。

私が「?」と首をかしげると

「ぅわあっ、ご、ごめんなさいっ」

と言って走って行ってしまった。

……変な子。

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