《MUMEI》
−−私は危機シュミレーション能力ゼロ人間なのだろう。
自分の行動によって物事がどうなるのか、ほとんどの人が無意識にすることを私は出来ないでいた。
まぁ唯一の救いは私が家に戻るまでは何も起きなかったことぐらいだ。
−−−−−−
部屋に戻ると佳代と靖子がいた。
私の顔を見て安堵したのは一瞬だけ、後は怒りの形相になる。
……それでも許してくれるだろうと考えていた私は本当に甘かった。
−−−−−−
「どこに行ってたの?私達を置いて」
「ごめん。どうしても行かなければならない用事があって」
−−−バン
座っていた靖子は床を叩いた。
カーペットだからそんなに大きな音がする訳じゃない。
だけどその動作に私はビクッとした。
靖子はいつも優しい。
だからそのギャップを感じて余計に怖かった。
「約束したよね、今日一緒に帰るって。
それに言ったよね昨日、何かあった後じゃ遅いって」
「……あ……うん…」
返事をするのが精一杯だった。
「佳代も一緒にずっと探してたんだよ。あんたに何かあったんじゃないかって。
それを用事がありました、で済まされる訳ないでしょ」
靖子は立ち上がり、入口の近くに立っている私の腕を力一杯引っ張った。
私はバランスを崩したが転ぶほどではなかった。
ただ肩にかけていた鞄がずれ落ちただけ……
その鞄からこぼれたものは……二度と元には戻らない………私の秘密だった。
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