《MUMEI》 いつもより大きな声侑の声はいつもより少しだけ大きい。 ほかの乗客にも聞こえるぐらいに。 「だいぶ腫れてんじゃん?ちゃんとシップしてんの?」 そこまで言ってから侑は やっとかたわらのおばさんを見て、大人びた口調で言った。 「すいません。彼女、足を痛めてるんです」 乗客の目がおばさんにむく。 おばさんも気まずそうに顔をしかめると 「なんなのっ、だったらそう言いなさいよね! わからないじゃない、まぎらわしい!」 と大きな声で言いながら、隣の車両へ移っていった。 「あ、ありがとう……」 お礼を言う声は少し震えてしまった。 「いいよ、そんなの」 と答えた侑から、少し驚いたような気配が伝わってきた。 前へ |次へ |
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