《MUMEI》

「早紀ちゃんは学校に携帯を持って行かないんだね」

えっ?って聞き直すところだったけど、何とか踏み止まった。
どうして佳代はそんなことを今言うのだろう?
わからないけど黙っていることが今は一番適切だと思った。

「学校で早紀ちゃんに電話したけど出なかったんだ。
しばらくしても来ないから靖子ちゃんに学校に残ってもらって私は先に部屋に帰って来たの。

それでもいないからまた電話したら、机の上で携帯が鳴りだしたんだ。

それで早紀ちゃんは携帯を持ち歩いてないことが分かったの」

話しながら佳代はピルケースからこぼれた薬を拾い始めた。

「靖子ちゃんがさっき言ってたけど私達はずっと早紀ちゃんを捜してたんだよ。
昨日聞いた詐欺師に酷いめにあわされてるんじゃないかって本当に心配した。

靖子ちゃんは早紀ちゃんのことが嫌いで怒ってるんじゃないよ。


早紀ちゃんが無事でいた事は嬉しいけど、やっぱり私達に秘密にしてあることがあったりすると悲しいな。

私達は早紀ちゃんの事、一生懸命考えるよ。
だから早紀ちゃんも私達の事、考えてほしい。


話すのが嫌なら無理には聞かない。

できる範囲で話して」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫