《MUMEI》

しかし交差した腕がXの字からハの字に開いた瞬間、シュバババーーーッ!!!と空中を走り抜けた無数の黄金のブーメランは、あの裂山剣をも遥かに凌ぐ凶暴な破壊力を発揮して、空の怪物達を細切れの肉塊に変えていった。破壊力は地上にまで及び大地に亀裂を穿(うが)ち、黄金の光のブーメランの射線上にいる者は、生物無生物を問わず全てが切り裂かれていく。
両断されたヒトデもどきの体から酸性の体液が雨のように地上へ降り注ぎ、ジューッ、ジューッと煙りを濃霧のように立ち昇らせる。
この時点で、パンドラの怪物達は完全な恐慌状態に陥った。
遥かなる昔、別の銀河系の惑星上、弱肉強食の掟が全てを支配する世界で、ひたすら互いを喰らいあいながら暗黒の生存本能のままに進化を遂げた魔生物達。
巨大な宇宙船団を率いる天津神一族に捕らえられ、数百年の間パンドラ空間に閉じ込められていた間も、決してその原始的本能を鈍らせたわけでは無い。
その本能が告げるのだ!
この「人間もどき」は危険な奴だと。
互いを踏み付け、押し合いへし合いしながら、
怪物達がひたすら逃走に転じ始めた。
スサノオは満面に邪悪な笑みを浮かべながら、その怪物達を追い掛け屠(ほふ)っていく。
それは殺戮の鬼ごっこ。
たちまち全身の血は自分が殺した怪物達の体液によって洗い流された。
やがて一方的な殺戮に飽きてしまったように、
「つまらん・・・・」
スサノオがたった今背中をぶち破って掴み出したばかりの、怪物の心臓を放り捨てつぶやいた時、
それまでひたすら逃走を続けていた群れが、突然急制動をかけて立ち止まり始める。
何匹かは間に合わずに、立ち止まる原因を作った巨大なクレーターの深淵に、鳴き声を上げながら飲み込まれていった。
が、続く怪物達の反応は
スサノオの眉をも疑問にひそめさせるものだった。怪物達の間に明らかな怯えが広がっている。
スサノオに対する恐怖も忘れて、その穴から一歩でも離れようと後退(ずさ)りをしている。
「ギギ・・・・!」
「ちゅみみーん!」
行くも成らず、退くも成らずに怪物達がスサノオと深淵の穴を、パニクったように交互に見ている。突然穴の中から触手が伸びて来るとカマキリもどきを捕らえ、体にぎりぎりと巻き付いた。
「ギギーーッ!!」
もがきながらカマキリもどきが深淵にひきづりこまれていく。
するとそれを合図にしたかのように無数の触手が深淵から現れ、次々と穴の側の怪物達を同じように捕らえ始める。
「?」スサノオが見守るうちにも、成すすべも無く悲鳴を上げながら、
怪物達は無数の触手のために深淵にひきづり込まれていった。
やがて凄まじい障気(しょうき)を立ち上らせながら、深淵の縁からラスボスがスサノオの前に姿を現した。

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