《MUMEI》

芹奈はグッと口元に力を入れた。
もう目の前は白く滲んでいる。


侑がああ言ってくれてホントにほっとした。

気持ちがゆるんだら今度は涙が出てきた。

こんなことでいちいち泣くなんてかっこ悪い。

泣くところなんて見られたくない。

でももう涙をせき止めるのも限界だという時
侑がスッと動いた。


ドアの近くの銀色のポールによりかかって

芹奈に背中を向ける。

それとほとんど同時にぽたりと涙が落ちた。

制服の袖で涙をぬぐってから

芹奈はすぐそばにいる侑を見上げた。



気づいて、くれたんだろうか。

泣いているところを見られたくないということに。

今日の体育の時間みたいだ。

あの時も、退屈していたら侑が話し相手になってくれて

でもクールな彼の表情からは本当のところは読めなくて

そうなのかな、と芹奈は思うばかりで……


私、どうしたんだろう……

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