《MUMEI》

「お前、今までバイトしていたな。」

「な…何のこと」

「とぼけても無駄よ!お隣の関さんから聞いたのよ!」


怒りを混じえ、母が険しい目で睨む。


(関さん…って最近入って来た後輩が確か関って名字だった…まさかお隣の人だったなんて)


私は焦ったが、開き直ることにした。


「はい、バイト…していました。秘密にしていて申し訳ありません。」


とにかくこの場を納めようと丁寧に謝った。


(お金も充分貯まったし、卒業まで後三日待てばいいんだから)


だが、母の告げた言葉に下げようとした頭が止まった。


「まったく!この家にお金がないなんて思われたらどうするの!貴女の貯めていた貯金は家計の一部にしましたからね。」

「えっ!なんでっ…」

「一族の繁栄の一部にしてあげてるんだから喜びなさい。」

真っ白になった。私は母の信じられない行動と、必死で貯めたお金が忌まわしい一族のものになることに今まで抑えていた怒りが爆発した。

「ふざけないで!!人が必死で貯めたお金に勝手に手を出すなんて!」


母は一瞬目を見開いたが、すぐ目を細めた。


「まぁ親に向かってなんて子なの!親の期待を裏切ったのを許してあげようとしているのに。バイトまでしてお金が欲しいなんてなんて醜い!!」


一番言われたくない人に言われたくない事を言われ、私は飛び出した。


最後の計画、家出を実行したのだ。

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