《MUMEI》
笑顔
「うんん」芹奈は小さく首をふって

ぎこちなく足を動かした。

さっきよりもしっかりと侑の肩につかまりながら。

肩に手を置いたとき、手を握られた時

きっと侑の目に入っただろう自分の爪。

いつもは特別な手入れなんてしてないけど

今日はお昼休みに、愛李がマニキュアを塗ってくれた。


私の指、女の子にしといてよかった。

愛ちゃんありがと……、と胸の中でささやく。

それからしばらく歩くと、芹奈の家に到着した。

「送ってくれてありがとう。ごめん、肩疲れたでしょ?」

門の前でお礼を言うと、侑は自分の肩を揉みながら

「うん……まぁ、まさかあそこまで体重かけてくるとはね」


「えっ、ごっ、ごめんっっ」

確かに結構しっかり肩につかまってしまった。

そんなに重かった!?恥ずかしー!と焦っていると

「――-って冗談だよ」

と侑が続けた。―――からかわれたっ!?

「もうっ!」

「おっと」

叩こうとした芹奈の手をひょいと身軽によけて

侑は唇をほころばせた。

「そんなに何度も叩かれないよ」

侑くんが笑った……、と侑の顔に見入る。

侑が軽く手をあげた。

「じゃね」

「あ……うん、バイバイ」

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