《MUMEI》
1~ファルミーア
朝起きると、昨日の出来事が頭をよぎって苛立った。

無様な平民がこの私に向かって「税を減らしてください」などと言ったのだ。

愚民がなにを言っている。この者を粛清しなさい!

薄汚いネズミのような平民は、家来に連れられて牢にいれられたはずだ。

処刑の時間はいつだっただろうか。そんなことはどうでもいい。

誰かが私の部屋のドアをノックした。

「おはようございます、王女。お起きでいらっしゃいますか」

「お入りなさい」

城に勤めて4、5年になる召使が私の顔を見るなり深々と頭を下げた。

「おはようございます、王女。今日のご気分はいかがですか」

「・・・昨日の愚民を思い出して気分が悪いわ。何時に処刑なの?」

「申し訳ありません。私はそのことについては・・・。フランツ様に聞いてきましょうか?」

小太りの宰相の顔が浮かぶ。

「聞いてこなくていいわ。それより、髪をセットして」

「かしこまりました」

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