《MUMEI》
隆志は俺に脚を絡め全身で引き寄せてきた。
僅かに匂う香水と体臭…。
お互いに昨日、シャワーも浴びずに眠ってしまった。
――大量の汗、
情事につきものな体液…。
それらのついたままの合わされた肌が吸盤の様にべとつく…。
――そして腹の辺りに彼の硬さを、感じた。
「何か俺ヤベーんだけど…、抱いたら余計はまっちまった…」
困った様な口調で耳元にそう吐かれる。
そして耳たぶを甘噛みされ、唇が首筋をなぞってきた。
「ぁっ……」
俺は反射的に顎を反らせ、隆志の髪を指先で握り込む。
そして同時に残りの腕を背中に回し、肌を辿る…。
――もぞもぞとお互いの躰が動き合い、
体液でかさついた陰毛が擦れ合った。
布団が勢いで僅かに捲れ、パサッと落ちると、
中からかぎ慣れたセックスの匂いがした。
隆志は俺の額にかかる前髪を、長い指で上に撫で掻き揚げ、そこに唇をチュッと落とし、眼、鼻筋、頬と降り唇を大切そうに丁寧に塞いできた。
お互いの唇を音を発てて吸い合い、舌先が絡み合う。
深いキスが始まる頃には、俺の躰も激しく熱を持ち、隆志を…
いや、抱いてくれる
男を求めて、俺は欲情に飲み込まれていった……。
――分からない。
やっぱり好きという感情がまるで湧かない。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫