《MUMEI》
俺は“あれ”を目撃したあと、道路の真ん中で倒れてしまったらしい。
原因は、栄養失調からくる極度の貧血。
それもそのはず。安斗に会えなかった日々、俺はほとんど物を口に入れてなかったんだから。
俺が倒れたとき、周りの人達が騒ぎ出したのに気付いた安斗は、倒れた俺を見つけて頭の中が真っ白になったらしい。
血の気が、引いていく音を初めて聞いたと言っていた。
「まったく…、心配させやがって……大馬鹿野郎」
2日間、目を覚まさなかった俺のそばに、安斗はずっとついていた。
会社も休んで。あの安斗が…?ってそりゃもうびっくりして。
「頼むから、二度とこんな思いをするのはもうごめんだからな…」
そう言いながら、俺の手を強く握っておでこを当てる安斗。
「安斗…、あの綺麗な女の人、……誰?」
「…見てたのか……?」
「…うん」
「…何か、勘違いしてるよいだな。
あれは、俺の幼なじみ、古い友人だ。お前とのことも知っている」
「え…、そ、そうなの…?」
「あぁ」
(なんだ、そうだったんだ…)
「まさか、俺が浮気したと思ってたのか?」
「…えっ、いや、あの、その…」
「……」
ヤバい、怒った。
どうしよー……
「はぁー……」
「ご、ごめんねっ…」
「……ゆるさん…」
「っ…」
もしかして……フラれるのかな……
「……」
涙が出そうになって、隠すように俯いてしまう。
「泣いてるのか?」
「っ…、な、ないてない、よっ……」
「うそつけ」
「っ……!」
ベッドに座って、俺を抱きしめる安斗。
耳元に、肩に、安斗を感じる。
「罰だ……
有人…
一生、……俺のそばにいろ」
「ぇ…」
「もう絶対離さない…
死んでも離さないからな……
お前が、俺のことを嫌いでも、離さないからな…っ」
「っ…うぅー……、…きらいな、わけ…ないじゃないかぁ……なさないで…、そばに、…いさせてぇー……うわーん………」
ガキみたいにワンワン泣いてやった。
安斗がよしよししてくれた。
「愛してる…」
初めての告白―…
俺も、俺も愛してるよ…
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