《MUMEI》

−−−−

今日も寝起きは最悪だった。

でもそれ以外は違っていた。
私は新しい幸せで満たされていた。

学校に行くときもそうだった。
靖子はわざといつもと違う道を選んでくれた。

今日は帰りも一緒だった。
始めてのことだった。
楽しかった。うれしかった。

−−−−−−

私達は商店街を歩いていた。

まだ、そこにいて欲しい人はいた。
魔女なのか詐欺師なのか。
別にどちらでも良いと私達は笑った。

−−−−−−
私達は近づいて行った。
私の顔に見覚えがあったみたいで話しかけられた。

「あら、また来たの。その後はどうだった?
言っておくけど幸せは返せないわよ」

「あの幸せはもういいです。新しい幸せがあるので」

何のことか分からないだろう。
曖昧な笑顔で返された。

「前もらったお金を返しに来ました」

「それは出来ないわ。あなたから幸せをもらったんだから。大切に使いなさい」

「それじゃあこのお金で幸せを買います。この友達二人を幸せにして下さい」

「二人に渡すのは無理よ。一人じゃないと」

私達は顔を見合わせた。

「私は占いは信じないよ」
靖子は顔を振った。

「それじゃ私、幸せになっちゃうね」
佳代は笑いながら言った。

「それでは確かにお金を受け取ります。
良い買い物をしたわね」

私達はもう行こうとした。

呼び止められた。

「今日は幸せだけじゃなくて不幸も取り扱ってるの。
こっちはどうかな、また売って行かない?」











「売りません」
私ははっきり言った。




「売りません。私の不幸は大切な、私だけのものだから」

−−−−−−−−−−−終わり

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