《MUMEI》 心の痛み「大翔、ご―――」 言葉の続きは、喉の奥でしぼんだ。 大翔に突然、驚くほどの力で両肩をつかまれて。 大翔の指先が肩に食いこんで、痛い。 固まってしまった芹奈の胸の前に頭をたれて 大翔は少しかすれた声で言った。 「――返事は今じゃなくていいから もう少しちゃんと考えて。それからでいいから!」 大翔は背中を向けると、足早に屋上を出ていった。 音をたてて扉が閉まった後、カクンと膝が折れて 芹奈はコンクリートの床にへたりこんだ。 緊張で指先が冷たくなっている。 ――自分がその立場になるまで考えたこともなかった。 誰かの想いをこめた告白を断るのが こんなにもエネルギーを使うのだということ。 人を傷つけるのは、こんなにも怖いのだということ。 侑は、何度こんな気持ちになたんだろう。 自分を好きだと言ってくれる人の想いを断って 何回こんな胸の痛い思いをしたんだろう。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |