《MUMEI》

朝。
まさかこんなに早く目覚めるとは思わなかった。
現在、午前4時30分。
…ご老人の生活みたいだ。
千里はまだ寝てるし…

「………さて、何か用事ですか?」

「…っ」

呼吸をする音がする。
気付いていなかったとでも思いましたか?
「…面倒だな…」
もう、止めましょうか。
こんなこと、面倒以外の何物でも無い。
「僕達を殺したいですよね?」

「蒔田…いや、三津の方がいいかな?」

「でしょ?三津浩太さん」
外にいる人物は肩を揺らした。
「……なぜ、解ったんです?」
「名前、可哀想だと思ったんですよ。」
「…はい?」
「蒔田のあとに浩太は僕だったら嫌だと思いますね。蒔田≠ナ浩太≠ナすから。」
「………は?」
三津浩太さんは何を言っているのか解らないというような顔で僕を見る。
「不自然なんです、貴方の全てが。」
「…………まさか君に言われるとは思わなかったよ」
「随分と失礼ですね」
「君に言われたくないなぁ」
「それもそうですね」
「君達は…一体何者なんだい?」
「何者でもありませんよ。」
「きっとそれは君の常套句なんだろうね。」
「そうですね。」
苦笑する三津さん、笑わない僕。
「正直な所…君達は恐ろしいよ。なんのヒントも無しに私の事に気が付くだなんて。教えてほしいな、なぜ私の正体に気が付いたんだい?」
「………」

「企業秘密、ですよ。」

「…そうか、それもそうだね。」
「そんなことより=cお話しましょう?三津さん。」
「………え?」
「今の話をしても楽しくないでしょうから、未来の話でもしましょうか。」
わざとクスクスと笑ってみせる。
「どういうことだい?」
「そうですね…僕はこの仕事が終わったら、真っ先に帰って寝ますね。最近ろくに寝てなくて。千里は多分料理を作って、お酒を飲むでしょうね。」
「な…何を言っている?」
「その前に、特案に寄らなきゃ。皆からお帰りって言われて、怪我したら春樹さんに怒られるだろうなぁ。」
「……にを」
「僕はぐっすり寝た後、近くの丘に登って景色を見るんです。そこがまた絶景で。きっと、千里はそこで月見酒でしょうね。唯人さんと一緒に。僕が来たら『よぉ、お前も飲むか?』って誘うかもな。僕はそれに押し負けて、一緒にお酒を飲むんです。」
「…なにを」
「あぁ、千里の作った肴、忘れちゃいけませんね。あれは格別に美味しい。唯人さんと僕で肴を取り合いながら、美味しくお酒を飲むんですよ、最高じゃないですか。」
「…なにを…言って…」
「それで夜が明けるまで丘でお酒を飲んで、二日酔いでまた仕事を」
「何を言っている!!」

遂に三津さんがキレた。
彼は僕に怒鳴り散らす。
「君達に未来なんで無いだろう!?君達は此処から一生出られない!!此処が君達の墓場だっ!」
「…駄目ですよ、三津さん。そんなに大声出したら…」

「騒がしいな、三津浩太。人の安眠を邪魔するたぁ…いい度胸だな。」

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