《MUMEI》

 






ガラガラ、



井戸から水を汲む。これが意外と重労働。しかしこの時代の井戸水はかなり綺麗でカルキの味もないし冷たい。

袖を捲り額に汗を流しながら三回目の汲み上げをおこなってる最中誰かが訪ねてきた…。









「すみませ―ん」









誰かが出てくれるかな









「すみませ―ん」

「…………………………」









何で誰も出てくれないの!?
………あ、そっか今皆仕事に出掛けてんだった。

あれ、誰もいないとかあたし見張っとくんじゃなかったの??







まぁ、いいや。









「はいはーい」と言って井戸の桶を置き、手にかかった水をパッパと振り払い足早玄関口に向かう。


声からして女性、しかも若い。
何の用だろう……












「はいお待ちどうさ……………」

「あ!星夜さん!この前はすみません、勝手に出て行っちゃって。謝るのも遅くなってしまったし……」










玄関にいたのは花ちゃんだった。あたしとわかった瞬間詫びを入れてペコリと一礼して謝ってきた。

あたしはそれに慌てて、










「だ、大丈夫だから!謝んないで。あ、着物!洗ったから持ってくるね!」

「いえ!あれは星夜さんに差し上げます」

「え、ぇえ!?いいって!悪いよ」

「助けてくれたのになんのお返しもしないなんて私の気が許しません。どうぞ貰って下さい」

「え、あ、じゃあ……ありがとう大切にするね」

「はい!」









あたしの返事を聞くと嬉しそうに微笑む花ちゃん。なにこの子超カワエエ










「花ちゃん、あたしの嫁に来ない?」

「へ?」

「誰が誰の嫁に来いだァ…?」

「ゲッ……」












現れたのは遊佐さん

いい感じにイラついてらっしゃる。
あぁ、絶対仕事中に嫌な事があったんだ…







これはうまい具合逃げないと……。



そう思い一歩足を後ろに下がる星夜、すると後ろを振り向き驚く花は一言









「おかえりなさい兄上、」

「おう、」






思考が停止














「……………………あ、………兄上ぇぇぇぇ!!?」




屋敷中にその驚嘆の声が響き渡る






 

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