《MUMEI》
取り合い
「なんかあった?」

―――どうして、そんなこと聞くの?

なんでわかるの?

ダメだ。この気持ちが消えてしまえば楽になるのに

それなのに、それどころか

どんどん加速していく。どんどん強くなる。

「……どうした?」

目が合うたび、声を聞くたび

どんどん好きになっていく―――

「侑く……」

目に涙をためて声を震わせた瞬間

別の手が芹奈の腕を奪いとるようにつかんだ。

大翔、と驚いて呟く。

芹奈を追ってきたんだろう。

大翔は乱暴に侑をつきとばし

強い力で芹奈を自分のほうへ引きよせた。

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