《MUMEI》

「若菜、今何時」


「今……えーと」
若菜が時計を見た。右手首に時計が光っている。


樹は若菜の手首を抑えた。




「痛いっ」


若菜が悲鳴を上げる。
黙って樹は若菜の手首から時計を外した。



手首には針の痕が残っていた。


「……何だよこれは」


「この間病院で予防摂取受けたの」
分かり切った嘘だ。付いたばかりの痕へ時計を掛ける必要はない。
何より若菜は左に時計を付けていた。



「手、触らないで貰えるかな。」
若菜の左手が右手を掴む樹を払った。目付きが変わっている。

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