《MUMEI》

 






「お――!お萩じゃーん!もーらいッ」

「あ!ちょっと一架さん!行儀悪いって」

「とか言いながら星夜も食ってんだろうが」

「ちゃんと座って食べてるからいいんですぅ〜」

「んな問題かよ。つーかさコレ誰から?」

「あ、花ちゃんです」

「あ―だからこんな上手いのかぁ………もう全部食っちまおうぜ」








今、大広間には星夜と一架、それと重箱の開かれたお萩。


一架の驚きの発言に星夜は目を見開く














「だ、駄目ですって!コレ皆の分もあるんで……」
「大丈夫大丈夫、証拠が無けりゃバレねーって」

「いや、そうゆう問題じゃ…ってあぁ!また!」

「いいんふぁって」










ひょい、とまたひとつお萩を口に含む。

モグモグと美味しそうにする一架、



残りの数は後七個、











「一人だいたい一個なのに…」

「んなの気にすんなって、あーウメ。まーたもーらい」

「あああ!ズルい!だったらあたしも」

「そうだ食っとけ食っとけ遅いのが悪い」









それもなんだか理不尽で薄情な気もするが、けれどそう思わせるほど花のお萩は美味しい。


甘すぎず、だからといって物足りないわけでもないちょうどいい甘味

もち米もベチョッとしてなくモチモチと粒の存在感は消えていない。





そう、ほんとに美味しいのだ













モグモグと頬張る二人、するとそこに何の前触れもなく現れたのは…………












「……………………てめーら」

「「ゲッ」」














気が極端に短い遊佐静、

低い声色に冷や汗をかき固まる星夜と一架。お萩の数はわずか三個、場の空気が一気に張りつめる……














「俺ァ、なんて言ったっけな……上木、」

「ぅえ!?あ、えっと……」

「ソレを一人で食うなって言わなかったか?」











おぞましい

黒く黒く、口元は怒りのせいかヒクリと上がり一歩一歩着実に近づいてくる。

星夜は米粒のついたまま遊佐に比例して着実に後退りする














「いいい言いました!確かに言いました!でも……」
「でぇも何だッ!言い訳のときによく使う接続詞がその口から出ようとはなァ!!」










こ、怖ェェェェ!
どうしよ怖すぎて涙も出てこないよ?

嗚呼、死ぬ確実死ぬ

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ














「一架さん食えって進めてきた、し………」

「ほう、他人に擦り付けやがるか。いい度胸してんじゃねーか……」










またも死亡フラグを自分で立ててしまう星夜、












「い、一架さん!アンタも同罪なんだから助け…………あり?」











藁にもすがるように一架に助けを求め振り向けば、そこは只の障子の開いた軒下。


そうつまりは―――――――




逃げやがったなあの糞アマァァァ










「ゆ、遊佐さん、おち落ち着いて、ね?は、話せばわかります!」

「あぁ、てめーにわかるようその身体に叩き込んでやらァ!!!」

「んぎゃ――――ッ」








――――――お萩ごときで………





 

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