《MUMEI》 『晩飯抜きだァ!』 そう言われてあたしは死ぬほど殴られた頭を擦りながら軒下の廊下を歩いている 「つったた、いったいなァ。あ、たんこぶできてる」 「えーどこどこ?」 ベシン、 「ぎゃあ!」 振り向けば憎たらしい顔をぶら下げていた久我がそこにいた。 憎々しく睨み上げれば久我は鼻で笑い飛ばす 「今、凄く的確に叩いたでしょ久我さん」 「え?ううん?全然。酷いなーその言われようは」 「いやいやいや絶対わざとでしょ!久我さんだし…」 「ほらまたそうやって俺だからとか俺なんだしとか、人を見た目で判断しちゃいけないんじゃないの?」 「いや、見た目じゃなく中身です」 「はは―鬱陶しーい」 バシン、 「ふげェ!」 ほんと遊佐さんもこの人もなんで女でもこんな酷い扱い?とゆうか、あたしだから酷い扱い? …………………それは辛いな、うん。 「なんの用ですか?」 「アンタ俺の分のお萩食べたんだって?」 「……………………………」 そういやお萩はあたしと一架さんのせいで、つかほとんど一架さんのせいで残り三個となり 一個目は遊佐さん、二個目は屋敷に帰ってきた順に雪白さんと黒沢くん。 だから久我さんの分け前は………… 「無いってどうゆうこと?俺、花ちゃんのお萩を生き甲斐として頑張ってんのにさ」 「絶対大袈裟だ!」 大声で叫びながら久我にツッコむ 「何?なんで俺の生き甲斐わかったように言ってんの?」 遊佐とはまた違う怖さを滲み出しながら星夜に迫ってくる久我にまたも冷や汗をかきながら後退る それに気を良くしたのか止まることなく楽しげに星夜を追い詰める。 「ギャァァァ!ごめんなさいごめんなさい!もうしませんからァ!」 「ん?謝ればいいとか思ってる?それは子供にだけ通用するものだよ。もっとあるよね大人の態様ってもんがさ」 「すんません!謝るしか知りません!」 「そっか―、じゃあ教えてあげないとね大人の態様」 「…………………え、」 口元だけ笑いながら黒い笑顔を近付けてくる。 そしてとうとう迫られ背中には壁、逃げれなくなった。星夜は恐怖に青ざめた顔色を浮かばせ久我を見つめた。 久我は不意に優しく笑いながらサラリと星夜の髪を手に絡ませ顔わずか数cmまでグイッと更に近付けさせ、 「手っ取り早く身体に教えてあげようか」 「!!?」 先程の遊佐の台詞と重なるが確実に意味の異なる言葉に背筋が凍る。 つか、マジお萩ごときにこんな仕打ち!? 泣けてくるんだけど!! 少女漫画でしか言わないようなフレーズを簡単に口にする久我だが、やはり顔が良いぶんそれさえ様になる。のが不服だ。 「いいいや、遠慮しますごめんなさい許して下さい。あ!今日お団子買ってきま……」 「今はお萩がすっっごく食べたい気分」 「…………………………」 こんの我が儘野郎がァ! 殺意が湧く星夜に対して飄々とした久我、 「ほら、話がズレてるこっち向いて」 「んな、なな何を!?」 「身体に教えるの」 「!!?」 顎を捕まれ顔を固定される そしてますます近付く両者の顔…… ―――――――うっわ、綺麗な顔 じゃなくてじゃなくて!!! ヤバいこれはヤバい 口が触れ合うのもあとわずかな距離、星夜は無意識にギュッと目を閉じた すると少しの間が空いてからクツクツとくぐもった笑い声が耳に入ってきた。 前へ |次へ |
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