《MUMEI》
8.スサノオ第二の変身!
暗雲に擬態していたゼウスが元の姿に戻った事で、闇の世界に光が差し込むかと思いきや、すでに太陽は沈み夜を迎えていたらしい。
だが満天の星が高天原の空を覆う事も無く、くもり空からポツリポツリと
、涙の雫(しずく)のように雨滴が落ち始めると、闇にうごめくナイアーラトテップと、それを見下ろすように宙空に浮かぶスサノオ・・・・
出会った瞬間に闘う事を運命づけられた、両者を哀れむかのように、瞬く間に、すさまじい豪雨が戦場を打ち始めた。
「うおおーーーっ!!」
スサノオが両腕を上げ、胸を反らしながら吠えた。
その体からカーーーッ!!と凄い白光と熱がほとばしる。
その熱に押されるように
、スサノオに向かい伸びていた触手が後退していった。
白光するスサノオの肩甲骨がミシミシと軋むと、ぐぐっと盛り上がり始める。
と見るや、その部分から握りしめた双つの拳がぶるぶると震えながらせり出してきた。
それはぐんぐん伸びると、たちまち新しく逞しい両腕に成長していく。
「な、何だーー?!
腕が四本になっちまったーーっ!!」


バリバリバリーーッ!!


雷のような音が轟くと、新しく出現した腕の先から、黄金の輝きが二本の線となってほとばしる。眩しい光が天狗丸の網膜を一瞬焼き、徐々に輝度を弱めると、二本の黄金に輝く剣の姿となって固定した。
「て、天狗ちゃん・・・・、まだ生えるーーっ!」ダキニが豊かな胸を、
天狗丸の腕に押しつけて叫ぶ。
「何ぃーーっ?!」天狗丸が見ると、再びスサノオの全身が輝きを増し、元の両腕の下から、またも新たな逞しい両腕が生え出してくる。
その腕の先からも二本の光の線がほとばしり、同じように黄金に輝く剣を握って固着した。
「う・・・・腕が六本ーー?!」
天狗丸が呆れたように呻く。



スサノオの全身の発光が徐々におさまっていった。
しかし発光が消えたわけでは無い。
直視できない強烈な輝きに変わって、それはスサノオの全身の輪郭を縁取るように、黄金の淡い炎となって、ゆらゆらと揺らめくような光を発っし続けていた。
新しく姿を変えたスサノオ。
髪は針金の如く全て立ち上がり、両眼は赤光して輝き続けている。
いつの間にか、その肌の色は漆黒に変わっている。
そして元の腕に加え、
新たに生えた四本の腕に剣を握った姿は、インド神話に登場する破壊神シヴァのイメージを彷彿とさせた。
だが現在に存在する、どんなシヴァ神を描いた絵画も、今ここにあるスサノオから見れば、劣化した肖像と言わざるを得ないだろう。
その猛々しい凶暴とも言えるオーラは、現在に伝わるどんな神々達よりも、原初の生命の輝きを放っていた。
そこに居合わせた全ての者達が、「魔神」の誕生を感じた・・・・。

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