《MUMEI》

「いててててっ!!お…落ち着け!腕が…」

「ほんっと心の狭いヤツだなー。猫と女相手にそんなカッとなっちゃって」

 その通り!

 ティアラはうんうん、と頷きながら、心の中で、男に拍手を送った。

「う……こ…この野郎っ、覚えてやがれ」

 いきなり現われた男に腕を捻り上げられた大男は、急いで自分の腕を取り返すと、典型的な捨て台詞を吐きながら逃げていった。

 大男が逃げていったのをみとどけた男が、こちらを振り替えり、手を差し伸べてくれる。

 その時、男の目が一瞬鋭くなった気がして、ティアラはどきっとしたが、その表情は、すぐに笑顔にすりかわった。

 きっと、気のせいだったのだろう。

「大丈夫か?」

 ティアラは男の手をとって立ち上がった。

「…ええ、おかげ様で。ありがとう…えっと…」

「あ、俺ドレークっつーの。よろしくな」

「私はティアラ。ありがとう、ドレーク」

「いーや、大したこっちゃないって。そんじゃ、俺はこれで。じゃなっ」

「あ、ちょっ……」

 唐突にきて、風のように去っていった。

 ティアラは呆気にとられた。

 ……なんだったの?


「おい」

 ふいに背後から慣れた声に呼び掛けられる。

「お前の猫だ。そこに伸びてて、道行く人にふんずけられかけてたぞ」

 すっかり忘れてた!

「やだ、黒ニャン!…大丈夫!?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫