《MUMEI》 ありがとう「だけど侑くんはどうにもならないんだったらさ とりあえず大翔と付き合ってみれば?」 「大翔はいいやつだもん」 本当に大事に思ってた。今も。 「とりあえず」なんてあつかいは絶対にできないくらい。 「だから余計、こんな気持ちなんかで付き合えないよ」 友達にこんなに強く何かを言いきったのは 初めてかもしれなかった。 みんな驚いたように芹奈を見ている。 やがて愛李が、長い睫毛をふせた。 「そっか……そうかもね」 ぐいっと肩を抱いて、頭をぽんぽんと叩いてくれたのは翼だった。 「うんっ、芹奈がそう決めたんなら 私たちはもう何も言わないよ」 そう言って翼はにっと笑った。 みんなも笑ってうなずく。 芹奈はあとからあとからこぼれる涙をぬぐった。 ごめんね、みんな。 私と大翔のこと応援してくれてたのに こんなふうになっちゃって。 ありがとう。 前へ |次へ |
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