《MUMEI》

ドドドドド・・・!!!後の世界の伝説の中で、ギリシャ神話では暴風と台風の神テューポーン、
ヒッタイト神話では嵐の神プルリヤシュの名で記される事になるスサノオから、ナイアーラトテップへ向けて、初対峙の時とは比べものにならない
くらいの巨大な「気」が、熱風のように吹きつけてくる。
(面白い・・・・)
数万年ぶりに身内から込み上げる衝動を「笑う」と言う感情である事に、
当のナイアーラトテップ自身が気付いたかどうか?
数百の触手が絡みあうように、滞空するスサノオへ伸びていく。
四本の腕に握られた剣が
、たちまちそれらを切り裂き薙ぎ払う。
触手への応戦は四本腕に任せたまま、スサノオが剣を持たない真ん中の二本の腕を、ナイアーラトテップへ向けまっすぐ伸ばすと、
何かを念じるように
「ムウッ!」
意志を集中させた。
開いた両掌の間で何か言いようの無い力が育っていく。
それは闇よりも黒い故に、光よりもいっそう際立って見える球体であった。
その黒い球体がフッと消えたと見るや、次の瞬間、音も無く、ナイアーラトテップの体の表面が
球体の形にえぐれた。
綺麗な断面を見せる傷口から、どろりと緑色の血があふれ出る。
するとまた、それと同じように球形にえぐられた 傷口が、
ボッ!ボッ!と
続けざまに現れる。ナイアーラトテップの体の表面の一部が、機銃掃射でも受けたように、たちまち穴だらけとなった。
無音なだけに天狗丸が名付けた「ゴールド・バレット・ア・シェル・カッター」よりも、その破壊力はいっそう不気味だ。
「奴め・・・・空間をえぐり取っているのか・・・・」
進化するスサノオの武器に、天狗丸が呆然と言った。
一方、攻撃を受けているナイアーラトテップは、傷口から緑色の血を吹き出させながらも、まだ
余裕に満ちた精神状態で考えていた。
(久しぶりに楽しめそうな奴と出会えた)
そこにあるのは敵愾心では無く、むしろ親近感と呼ぶべき感情だったかも知れない。
確かにナイアーラトテップの直感は、ある意味正しかった。
これは光と闇の闘いでは無い。
闇の化身同士の闘いだったのだから。

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