《MUMEI》

ズズズ・・・・。
ナイアーラトテップが、ナメクジの腹足のような
吸盤の付いた足をうねらせながら、意外に早いスピードで大地を前進する。行く手を逃げ惑うパンドラの魔物達が、次々 と悲鳴を上げながら、その巨体の下敷きとなり、轢(ひ)き潰されていく。
そのナイアーラトテップと等距離を保ちながら、スサノオが滞空していた。
(それでは少しは私も、楽しませてもらうぞ)
「いぅるらああああ!!!!!!!」
ナイアーラトテップが
突如轟くような咆哮を上げた。
その瞬間、巨体全体からどす黒い「妖気」がほとばしり、大地が鳴動する。
今まで出鱈目な方向を向いていた、幾千幾万の眼が一斉にスサノオの方向を向くと、


ザザッ!!


眼球の動きに呼応するように、うねうねとそよいでいた無数の触手全てが、宙空のスサノオをロックオンした。
するとそれぞれの触手が
、独自の変貌を遂げ始める。
先に見せたように先端が大蛇の頭部のように変化するものがあれば、蟹のハサミのようになるもの。
サソリの尾のように触手全体に結節が出来て、針のようになった先端から、毒液らしいものを滴らせるものまである。
さらには全体に刺(とげ)を生やして鞭のようにビュンビュン風を切ってうねるもの。
明らかに生命とは異なるメタリックな輝きを持つ、マニュピレーターの先端では、唸りながらドリルが回転していた。
それらは全て、ナイアーラトテップが幾千幾万の恒星系の惑星を渡り歩きながら、イケニエにして来た生命体達の、遺伝情報から生み出されたものだ。
(その中には機械生命体もいた)
そう、ナイアーラトテップに喰らわれ吸収された者には、死の消滅による、苦しみからの開放さえも許されない。
こうして必要が生じれば、分子の段階から再生させられ、利用価値が無くなると共に再び苦痛と共に消化吸収される。
ナイアーラトテップが死なない限り、犠牲者の魂は永遠に牢獄の中に囚われ続けるのだ。
ナイアーラトテップ・・・・、その存在そのものが、まさしく「生きている無間地獄」だった・・・・。

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