《MUMEI》
プロローグ・初射精
夢・・・・。
そこは、心が全ての枷（かせ）から解き放たれる場所・・・・。
そこには、道徳も善悪も存在しない。
どんな紳士や淑女も、心の奥底の本性が剥き出しになる場所・・・・。
その本性の中には、自分自身さえ知らない欲望さえ、含まれているのかも知れない。



山下悟（やましたさとる）は全裸で草原を走っていた。
心地良いそよ風が、どこまで続くかもわからない草原を吹き抜けている。 足が膝下くらいの高さの
草の中に没する度に、柔らかな土の感触が、足裏に伝わって来る。
悟はハァハァ息を切らしながら、前方に眩しく輝く白いものを追いかけていた。
手を伸ばして捕まえようとしても、それはいつもぎりぎりのところで身をかわしすり抜ける。
それは艶光る黒い髪をなびかせ、Ｓの字にカーブを描く背中と、豊満なお尻を向けて走る女体だった。引き締まったふとももが忙しく動く度に、
キュンとつり上がった白桃のようなお尻が左右に揺れて、えくぼのような凹みを作った。
高校では陸上部に所属し走りには自信がある。
そんな悟を嘲笑うように、クスクスと笑い声を響かせながら、背中を向けた眩しい女体は、悟が伸ばす指先ぎりぎりを走って行く。
悟の股間では痛いくらいに勃起した高ぶりが跳ね踊って、お腹の肉を叩いた。
（畜生・・・・！何て眩しい満月みたいなお尻なんだ！そして何て憎らしい魅力的なお尻なんだ！捕まえたらひぱたいてやる！少しくらい強くひぱたかないと気がすまない！でもこんな綺麗なお尻に傷が付くのは嫌だな・・・・）
夢中で追いかける頭の中を、錯乱した思考が渦まく。
（それにしても何て早いんだ。このままじゃ永久に追いつけないぞ？！
よし！イチかバチだ！）悟は賭けに出る事にした。それにはタイミングが大事だ。失敗すれば今まで以上に距離を開けられる事になるだろう。
そうなれば、もう二度と捕まえられないような気がした。よしっ！今だ！
「うおおーーっ！」
悟は眩しい女体へ向けてダイブした。
（よし、捕まえたぞー！）悟の心を歓喜が満たす。
（それにしても何て・・・・何て柔らかいんだ！）悟は夢中でむしゃぶりついた。
「もう！悟ちゃんたら、がっつかないの！」
「え？！」
聞き覚えのある声に、ぎょっとして悟が、頬を擦り寄せたお尻から顔を上げる。
振り返った黒髪の隙間から、女の瞳が小悪魔のように光って微笑んだ。
「げーーっ！姉貴ーー？！澈」
悟は布団を跳ねのけて上体を起こした。
「ぜはー！ぜはー！」
と荒い息を吐く。
心臓がドキドキ脈打っていた。
そして・・・・
「うう・・・・やばい。しまったー！」
股間にごわごわと気持ちの悪い感触がある。
トランクスが夢精で漏らした精液で、ぐっしょりと濡れている。
（最近マスかいてなかったからな。きっと溜まってたんだ・・・・）
悟は自分自身に言い聞かせる。
（そうでなければ、誰が姉貴なんかでイクかよ？！俺は変態の近親ソーカンじゃねーっつーの！！）だが夢の中で見た眩しい白い輝きが、今も頭の中にちらついている。
悟の心が五年前の、あの「屈辱の夜」に跳んだ・・・・。

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