《MUMEI》 ちゃんとわかってる。 けど…「わ、私ね、侑くんのことが好きなんだ……」 屋上で芹奈はそう口を開いた。 ちらりと大翔を見る。 大翔はうつむいて黙ったままだ。 「これが報われない恋だってことは、わかってる」 芹奈は続けて言うと、大翔は「じゃあ」と 身を乗り出すようにして声を強めた。 「じゃあ俺と付き合ってくれる?」 芹奈は黙って、今度は首を横にふった。 顔を上げて、まっすぐに大翔を見つめる。 そうすることが、まっすぐに気持ちを伝えてくれた大翔への礼儀だ。 「報われない恋だってわかってても それでも侑くんを好きって気持ちはなくならないの」 そして気持ちの強さも変わってない。 きっとこれからも変わることはない。 「だから大翔とは付き合えない。ごめん」 しばらく芹奈を見つめていた大翔は ゆっくりと、視線を宙に上げた。 そしてまぶたを下ろし、深く息を吐いた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |