《MUMEI》
ちゃんとわかってる。 けど…
「わ、私ね、侑くんのことが好きなんだ……」

屋上で芹奈はそう口を開いた。

ちらりと大翔を見る。

大翔はうつむいて黙ったままだ。

「これが報われない恋だってことは、わかってる」

芹奈は続けて言うと、大翔は「じゃあ」と

身を乗り出すようにして声を強めた。


「じゃあ俺と付き合ってくれる?」

芹奈は黙って、今度は首を横にふった。

顔を上げて、まっすぐに大翔を見つめる。

そうすることが、まっすぐに気持ちを伝えてくれた大翔への礼儀だ。

「報われない恋だってわかってても
それでも侑くんを好きって気持ちはなくならないの」


そして気持ちの強さも変わってない。

きっとこれからも変わることはない。

「だから大翔とは付き合えない。ごめん」

しばらく芹奈を見つめていた大翔は

ゆっくりと、視線を宙に上げた。

そしてまぶたを下ろし、深く息を吐いた。

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