《MUMEI》

ジグザグの軌跡を描いて転移するスサノオを、蟹(かに)の胸脚にしか見えないハサミが、がっちりと捕らえ挟みこんだ。
ギザギザのハサミが凄まじい力で、スサノオの胴体を両断せんものと食い込む。
「ぐはぁーーっ」
スサノオが苦痛のうめき声を上げて、よだれを垂らす。
「うおおーーっ!!」
剣を握っていない右腕を高く振り上げると、勢いよく右肘をハサミに向かって振り下ろした。
肘を中心に超振動が走りハサミに亀裂が走るも、
そうたやすくは粉砕されない。
バキィーッ!
バキィー!
バキャーッ!!
三度目の肘打ちの後、ようやくハサミが砕け散り、開放されたのもつかの間、
ビュンッ!
下方から毒針が突き上げて来た。
何とか毒針を両腕で掴み止めたのは、先端が腹に突き刺さる紙一重の距離だ。
針が名残惜し気に、先端から毒液を、スサノオの腹部に吹きかける。
途端に濛々(もうもう)と煙りを上げ、その部分が焼け爛(ただ)れていく。
「ぐ・・・・ぬっ」
苦痛の声を耐えるスサノオ。
迫る毒針を食い止めるため、スサノオの両肩の筋肉がこぶのように盛り上がった。

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