《MUMEI》

「……いや、寝てた……かも」

「ハァッ!? アンタ寝てたの? 昨日ちゃんと寝てなかったんじゃないでしょうねぇ」

「寝たよ。今日は慣れないことの連続で、予想以上に疲れてたのかもな」

「ふぅ〜ん。じゃあ体調は問題ないんだね?」

気遣《きづか》わしそうな顔を向けてくるので「大丈夫」とだけ答える。

「そっか。じゃあはい、これ飲んで」

キャルは水筒のような物を渡してくれた。

どうやら中には昨日と同じ水が入っているようだ。

礼を言いつつキャップを外し、一口含むと口の中が切れているせいで水がしみる。

こんな感覚は久しく忘れていた。

それにしても、キャルが言ってたとおりキアンちゃんは強い。

一見無駄な動きに見える動作がフェイントの役目を果たし、わかっていても毎回ひっかかってしまう。

でも、一番印象的なのは戦ってる時の表情かな。

本当に楽しそうだ。


キアンちゃんはジュードさんと同じでプレイナー≠ニ区別のつかない容姿をしている。

オレの身長が百七十センチ程度で、キャル(井下《いのした》さん)が百六十ぐらいだから……百五十ってとこかな。

愛らしい顔に栗色のショートヘア。

ぬいぐるみにしてやりたい感じがする可愛さだが、その反面、戦わせるとメチャクチャ強い。

このギャップが憎たらしい。

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