《MUMEI》

 







まったくこの草食系め。










「可愛い子ぶってんじゃねーよ腹立つなぁ。………よし!じゃあこの私が片想い佐野くんの為に一肌脱いでやろうじゃないか」

「え?」








ガタン。










「オーイ青葉ぁ!佐野がさぁ――」
「やーめて――――――――!!!」

「ムゴッ」









佐野は必死な顔をしながら大声を上げる夜風の口元を手で覆う、しかし青葉の耳には届いていてめんどくさそうに夜風と佐野の席にやって来る。


そして一言、










「何?」










透き通る淡い茶髪を靡かせる、その様にうっとりと見つめる佐野を横目に









「佐野が青葉のアド知りたいって」

「「え、」」







一瞬で顔を真っ青にさせながら夜風の方を見る。しかし夜風はお構い無しに、









「友達になりたいってさ、いいよね青葉」










ニッコリ、出来るだけ内心を読まれないよう自然を装う。青葉は夜風の顔をじっと見たあと視線を隣の佐野に移し少し表情を柔らかくして













「別にいいよ。」と、答えた。
佐野は青い顔から湯気が出る程に赤くさせ喜んだ。













「でも何で急に?」

「いや、あの、」

「前から友達になりたかったけどタイミングが無かったんだって」

「そうなの?」

「う、ん」

「別に普通に声かけてくれればいいのに」










ほのかに笑みを浮かべる青葉にクラッと目眩を起こす佐野、


――――やべぇ、重症だわコイツ。







夜風はバレないよう笑うしかなかった











確かに中村青葉は魅力的だった。

化粧っ気の無い青葉だが、その端正な顔だけで十分と言えるほどの美人、逆にしないほうが似合うだろう。


睫毛は長く肌は何もしていないのに陶器のように白い。まるで自分とは正反対で羨ましかった。



自分もあまり化粧はしないタイプだが青葉のように美人ではない。髪だって青葉の薄茶色のほうがよっぽど綺麗だ。私はただの黒髪、長さも中途半端、ある意味私に似合っているだろう。






佐野が恋に落ちるのも無理は無い











 

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