《MUMEI》

 








「………………やった……………」










プルプルと震える手でケータイを握りしめる。












「マジもう幸せすぎて今日なんにも食えない!ありがと夜風!」










廊下でホウキとケータイを突き上げながら喜ぶ佐野、只今掃除の時間。


あちこちで生徒がホウキを持ったりゴミ箱を持ったりしている








「そりゃ良かったよ佐野くん、借りはラーメンでいいよ」

「…………夜風って転んでもタダでは起き上がらないタイプだよな」

「人をダメ人間みたいに言わないでくれたまえ」









ビシッとホウキの先を佐野に向ける










「でもここからが始まりなんだからアド手に入れたぐらいではしゃいでしゃダメっしょ?オラオラ」

「いたっ、痛い痛い」









向けていたホウキをそのまま佐野の頬にツンツンと突きつける。













「お前のことだから調子に乗ってくどいくらいメール送るんだろうな―あぁウザいウザい」

「ちょ、痛いし酷い!しないって、つうか怖くてメールすら出来ないかも…」
「こんの草食男子がァ!お前らみたいなのが増えるからカップル率も減ってきてラブホも経営が難しくなってんだよォ!」

「誰情報!?つうか大声でそんなこと言うなよ!周りガン見じゃねーか!」

「なぁにジロジロ見てんだテメーらァ!見せもんじゃねぇぞコラァ!!」
「口悪過ぎぃぃぃ」









掃除時間、ホウキを持って暴れる夜風と慌てる佐野の後ろ、周りはそれに気付き退け反る。

そして佐野も気付き青ざめた表情のまま周りと同じく端による……が、夜風はまだ気付かない。



冷たく冷たく取り巻く空気、











「あれ?佐野?」





クルリとようやく振り向けば立ち塞がる……










「…………………あ、ども、荒木……先生……」

「よぉ黒埼、何してんだ?」











冷たい空気が廊下に流れる

優しく問いかける荒木の声が嫌に脳内にこだまする。




一瞬で冷や汗ビッショリになる夜風を笑顔でただ見つめるだけの荒木、












「………掃除、です」

「へー、ホウキを振り回すのがお前の掃除の仕方かぁ」

「て、天井も掃除しとこっかな―…と」
「ほぉ、お前はほんとに口が達者だなぁ」








ガシッ、



「ブヘッ!?」








勢いよく顔を片手で摘ままれ顔が酷い有り様だ

それでも尚顔を近付け力を緩ませることは無い。












「プリント、今週中だ。いいな?」

「は、はひぃ!!」

「残り5日間、金曜の夕方までだ。もし過ぎれば…………わかってんだろうな゛ァ〜…」

「はひぃ!!!」











涙目になりながらコクコクと頷く、荒木はため息をはき、パッと手を離す。








「いだい……」

「じゃあな、あと佐野」
「は、はいぃ!」

「お前もコイツと一緒に暴れんじゃねーぞ」

「はい!」













佐野のいい返事を聞くとスタスタとスリッパの音をたてながらその場を去った。

嵐が過ぎたことに周りの生徒達は安堵であちこちからため息が聞こえた…………













 

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