《MUMEI》

 









「………………アンタモテるでしょ」

「え?」

「イケメンだから」










素直に言えば灰親楓は何か含んだ笑みで「そう?」と、答えた。














「私もモテてみたいなー」

「モテないの?可愛いのに」

「はいはい」









どうせお世辞だ、それともイヤミか?



夜風は微塵にも信じないままスタスタと灰親をおいていく。

その後ろで灰親は夜風に気付かれないよう冷ややかな笑みを浮かべた。
















□■□









「あー涼しいー」

「外が暑いから余計に涼しく感じるね」












図書館の中はクーラのおかげでひんやり涼しかった。夜風は手を広げ身体全体で気持ちよさを表す。








「あの壁際にする?」

「あ、そうだね」









灰親の言葉に同意して二人は壁際の机に向かい合わせで座った。

夜風はさっそく鞄から束ねたプリントを取りだし「っしゃーやるぞォ!」と、気合いを入れる。










カリカリカリカリ、







黙々とシャーペンを走らせる音、周りの静けさに溶け込んでいた。

夜風は灰親の様子が気になってチラリと目線だけ向けるとあることに気が付く、












「眼鏡、するんだ」

「…あ、うん。読み書きする時だけね」

「ふーん………ねえ、」

「ん?」

「なんでわざわざこんな面倒なこと引き受けてくれたの?」

「嫌だった?」

「いや、助かりすぎます」

「ならいいじゃん」

「いやでも普通さ、嫌がるでしょこんなん。しかも急に友達になろうとか……」

「君が気になるからかな?」

「え、」










間があいた

そしてまたニコリとあの作ったような笑み。試しているような口調に私はとうとう気になって口にした。














「それって本音?」

「え?」












灰親楓の目が見開かれる














「所々違和感あるんだよね、昨日のこととかその笑い方とか、なんか試してる?」











膨らんでいた疑問を全てぶちまけた。

さてこのあとどう反応するのかと無言で灰親楓を見ていると彼は予想外にも吹き出した。













「あはは、あーなるほど、そうくるか……」

「!?」











突然空気が変わる

嫌な冷たさが身体をかすめた………














「君はそこらの馬鹿女共と違って感がいい。でも馬鹿だ」

「………え、あのついていけないんだが」

「あぁ、別にいいよ話を合わそうなんて思ってないから。実のところさ君がどのくらいしたら俺に惚れるか試してたんだ」

「は!?」

「あ、いい反応いい反応。でも結局無理だったんだけどこれはこれで面白かったから良しとするよ」












 

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