《MUMEI》
冷たいお茶が美味しくて俺は一気に半分飲み干す。
勢いが良すぎて顎に水滴が伝い、人差し指で軟らかく、拭う。
「はあ…、何?」
――じっと真顔で俺を見ている隆志。
俺は何気なく尋ねる。
「いや…」
隆志は困った様にふと笑いながら視線を外し、そして袋から海苔巻きとサンドイッチを俺の目の前のローテーブルの上に出した。
「御免なー、こんなんで…、俺何も作れねーからさ」
何だか申し訳なさそうにそう言われて、
「そんな、わざわざ買って来てくれたのに…、あの俺、自分の分出すから」
俺は床に置いといたバッグを腕を伸ばして掴み、ファスナーを開ける。
「はは、良いよこれくらい、たいした事ねーし…
つかこん位当たり前にさせろよ…な?」
グラビアでいつも見る様な格好いい笑顔でさらっと言われ、
俺は素直に、従った。
隆志は海苔巻きのビニールをさっと外し、俺に差し出してくる。
「はい、納豆だろ?」
朝は納豆だろ!とパン派の隆志とふざけて言い合った事がある。
「はは、覚えてたんだ…」
俺は有難く受け取り
「じゃ遠慮なく、頂きます」
隆志も俺の脇に座り、サンドイッチを開けた。
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