《MUMEI》

「あの子、強いよなぁ……。悔しいよ」

ポツリと本音が零《こぼ》れてしまい、それを聞いたキャルが――

「当たり前でしょ? 戦闘経験も実際にも、向こうが上で先輩なのよ? 悔しがるのはいいけど、落ち込むことはないわ」

あの容姿でオレより年上なのは驚きだが、どうにもキャルの言葉が引っかかってしまう。

経験が上だから強いってのは何か違う気がするからだ。

その物事に対する理解と、それを実行できるだけの能力があれば……強いってことだと思う。

現にスポーツの世界では、十年以上のキャリアを持った選手がキャリア数年の若手選手にやられる話をよく聞く。

つまり『力のある者が強い』という図式が成り立つ。

オレの力がキアンちゃんの力に及ばないからこういう結果になってるだけであって、キャルの言葉は慰《なぐさ》めにしか聞こえない。

水筒の水をもう一口飲もうとし、ふと中を覗《のぞ》き込む。

打撲や擦《す》り傷で、普段はお目にかかれない自分のツラが映り、思わず苦笑する。


「ケータくん。そろそろいいかな? 訓練を再開しよう」

「……わかりました」

キャルに水筒を返し、再び訓練が始まる。

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