《MUMEI》

「梨華?何ボーッとしてんの?」

「…わっ!!いきなり何、陸っ」

「何って、梨華がボーッとしてっから」


数学の時間、ボーッとしちゃうのはやっぱり、無条件で先生と同じ空間にいることが出来るから。

私にとって、貴重な時間なの。


「…陸の馬鹿っ」

「はっ!?何だよ、いきなり!!」

「ちょっ、やめてよ、馬鹿〜っ!」


笑いながら私の髪の毛をクシャクシャする陸。

昔から陸は何かあると必ず、私の髪の毛をクシャクシャする。

照れ隠しであったり、ただのイタズラだったり。

だけど陸の手はあったかいから、別に悪い気はしない。

…だけど、先生に見られてるかもしれないと思うとちょっと…。

まあ、陸に嫉妬なんてしないよね。

分かってるから。

先生の一番は奥さん。

どんなに私が好きって伝えても。

どんなに私が愛を注いでも。

先生は私に優しくしてくれているだけ。

…そう思うとやっぱり悲しいかも。

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