《MUMEI》
そして不思議の夢へ
「ん…ぅん…」

本日二度目のお目覚めだ。

ぼーっとする頭でそんなことを
考えた。

…俺、また寝ちゃったのか?

背中に冷たい床の感触がする。

…しかも、床に寝転んで寝てしまったのか?


………いや、おかしいだろっ!!


頭が一気に覚醒して、
これまでのことが走馬灯のように
脳裏をよぎった。


えーと、落ち着け、自分。
ここはどこ、なんだ…?

見渡してみれば
冷たいと感じた床は大理石で
真っ白に磨き上げられ光っている。

顔を上向けば、同じく真っ白な
天井が目に入った。

床と違うのは、その天井がドーム型、とゆうことくらいだろう。

前を向くと木製の立派な長椅子が8つ
同じ向きに行儀よく並んでいる。

そして、長椅子の向こうには
ちょうど学校にある教壇を大理石製にしたような台と

大きな十字架…ロザリオってゆうんだっけ…が飾ってあった。

…教会?…

すくなくとも第一図書室ではなさそうだ。



って、んな訳あるか!
これは、夢だ。
夢。そう、夢。


目を覚まそうと奏多は軽く頭を振った。

髪がパサパサと頬にあたる。

…ん?
…俺の髪って顔にあたる程ながかったか?

不思議に思って髪に手を伸ばす。

「なっ!!!」

思わず声がでた。

掴んだ髪は肩より下で揺れた。

長さに驚いただけじゃない。

…きれいな…きれいな…

「銀…い、ろ…?」

そう、長い銀髪。

そこで初めて、自分の身体をじっくりみる、とゆう選択肢がうまれた。

周りのおかしな環境に気をとられ、
自分のことなど露ほども気に留めていなかった。


その時、不意に、光る床が鏡の役割を果たしてくれることに気がついた。

そこに映った自分の姿に

奏多は

………絶句した。


肩の下で揺れる銀髪。

大きく見開いた目もシルバーだ。

小さな鼻と可愛いらしい口。

桜色の頬は白い肌に映えた。

ペタンと女の子座りした状態で
スカートの下から伸びている
華奢で程よく肉付いた白い足。

腰にはしっかりと、くびれがあり

少し視線を落とせば、
標準より少し大きい(であろう)

…胸まで目についた。


目眩がした。

奏多は思う。
人はパニックを通り越したら
冷静になれるのだと。


今、自分は女の子だ。

いや、自分は男なんだけど

身体が女の子だ。

しかも、かなりの美少女。


「どうする、俺…。」

つぶやいた声まで妙に可愛らしい。

喋るのも嫌になる。


奏多は立ち上がった。

こんなところで座り込んだまま
いても、事態は何も変わらない。

奏多の決断力は鈍ってはいなかった。

立ち上がった状態で、
もう一度自分の姿を見る。

白いカッターシャツに
黒いベスト。
ベストのボタンは金色でキラキラと
光っていた。

カッターには、黒地に赤のチェックがはいった

可愛らしいネクタイが結んである。

長袖の筈だが、暑さ対策なのか、
カッターシャツの袖は

無造作にひじの上まで
捲り上げられていた。

ネクタイとお揃いの黒と赤のチェック柄スカート。

足元は、膝下の紺の靴下に
黒のローファーとゆう恰好だ。

…なんか、学校の制服みてーだな。


「自分がスカートはくなんて一生ないと思ってた。」

思わずつぶやいた。

いくら女装が似合うと勧められても

ちょっとした遊びだと言われても

奏多のプライドが女装なんて
許さなかった。

ただでさえ、女顔はコンプレックスなのだ。

それが、今は本物の女子…だなんて。

「はぁ…。」

ため息の一つもでる。

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