《MUMEI》 私が押し黙っていることに焦れたのか灰親楓は売り言葉みたく、 「もしかして言えないくらい恥ずかしい名前とか?」そう煽るように言葉を投げ掛けてきた。私は苛立ちを含んだように「違う!」と、断言する。 「じゃあ答えれるよね」 私だけじゃなく灰親楓までもが苛立ちを含む言い方だった。私は諦め気味にため息をつき、 「…………黒崎夜空、夜の空って書いて夜空」 「ふーん、そのままだね。なんて呼ぼうか」 「何でも」 「んじゃ……黒ちゃん」 「却下」 「何で可愛いじゃん安田大サーカスと一緒だし」 「だから嫌なんだよ!」 「挨拶するときは高い声で『黒ちゃんです』ね」 「だからやるかァ!」 私の大声が響き渡る。そして無数の突き刺さる視線、 「…………………………………」 「やっぱ馬鹿だね」 「うっさい」 恥ずかしさのあまり縮こまって頭を抱え伏せる。目の前のコイツは楽しそうにニヤニヤと腹立つ笑みを向ける 「ま、とりあえずあたりさわりのない名字で呼ぶとするよ。黒崎」 「………………………なんでもいいよもう」 面白げに私の名をゆっくり囁くように口にする。私はまたため息をこぼしたくなった。 「で?」 「…え?」 ニコリ、肘をついてまたあの作ったような即席の笑顔を張り付けていた。何故だか身構えてしまう。 「俺はちゃんと呼ぶんだし、黒崎、君も俺の名前をちゃんと呼んでくれない?だってほら、フェアじゃないし」 「………………………」 フェアじゃない?よくまぁそれを口にできたなぁコノヤロウが アンタは自分を優位に立たせる天才のくせに…… でもそれを言うつもりはない。けど今、嫌だと断ったとしても引き下がらないだろう。 それがコイツだ。 「なんて呼びたい?」 「黒崎の好きなように」それは甘い甘い蜜を垂らしたような言い方。 そんなんで私が酔いしれるとでも思っているのか 「んじゃああたしも名字で……」 「却下」 「はいい!!?」 驚いた まさか一瞬にして断られるとは微塵も思ってなかった私、変に身を乗り出していた。 「何で!?アンタは私を名字で呼ぶのに私はダメなわけ?意味わからんわッ!」 「名前がいいな。名前」 「椿?」 「……………本気で言ってる?」 「ウソ!ウソです!」 冗談のつもりが本気にとられて、灰親楓は笑顔から一変尖った雰囲気を纏い真顔になる 私は涼しい環境のハズのくせに冷や汗が流れた。 「ちゃんと言ってよ」 「………か、楓さん」 「呼び捨てで」 「……か、えで?」 「よし決まりね」 「え!?」 灰親楓はまた笑顔に戻った 前へ |次へ |
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