《MUMEI》

「つまり、奏多ちゃんは男の子で
そこに寝てるのが奏多ちゃん本来の身体ってこと?」

「そうゆうことだ。」

奏多が何度言っても、
チェシャ猫は、《奏多ちゃん》と
呼ぶことをやめないので、
もう諦めた。

「ふーん。
男の子だったんだ。なんか納得。
女の子なのに‘‘俺‘‘とか言うし
言葉使い乱暴だし、変だとは、思ってたんだけどねー。」

チェシャ猫は、妙に納得した様子で
うんうん、と頷いている。

「驚かないんだな。」

冷静になった奏多が聞くと。

「夢の国だからね。
なにが起こってもおかしくないんだよねー。」

あっさりとそう返された。


「…まぁ、こんなこと今まで
なかったんだけど。
今の夢の国が不安定だから…
こんなことになったのかな。」

その呟きは、寂しそうだった。

その証拠に、耳はしゅんと垂れ、
しっぽはだらんと力なく下がっていた。

ーこいつ絶対隠し事できねぇなー

奏多は、そんなことを考えながら、

「不安定って?」

気になったことを質問した。


「あぁ…うん。
こんなことに巻き込まれちゃったんだもん。奏多ちゃんにも説明するよ。」

チェシャ猫は頷いた。

「でも、その前に奏多ちゃんの‘‘体‘‘のほうを起こさないといけないね。」

真面目な顔でチェシャ猫は呟くと
いまだにすやすや安らかに眠る
‘‘体‘‘に近づき、そっと揺すった。

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