《MUMEI》

 








「………………ところでさ、」

「?」

「いつまで同じプリントやってるわけ?」

「………え、」













焦って手元のプリントを見やると、まだ半分しか出来てなかった。

図書館に入って出来た枚数は一枚半、そしてまだ手をつけてないプリントは山のよう。





気が重くなるのを感じた















「話すことに集中しすぎ。もう少し要領よくしなきゃ……あ、馬鹿だから無理なのか」

「オイさっきから馬鹿馬鹿って……」











言ってる最中、十枚ほどのプリントが渡された。

私は楓の平然とした顔を見ながら、










「…………………これ、もしかして」

「今出来た分、」

「早!!」










バッ!と壁に設置されてあるでかい時計を見た。


時刻は16時手前、まだ1時間も経ってない。私はまた楓のほうにギギギ、とオイルが無くなった機械のように鈍く顔を向きなおす













「凄い」

「数学は得意って言ったじゃん。でもま、」

「?」








ガタン、


不意に机を引き立ち上がる楓、









「ここらで俺は帰るとするよ」

「ええ!?」

「黒崎が俺を見破ったってことはゲームオーバーって意味だし。なのにまだプリントを手伝うなんて馬鹿らしいだろ?メリットが無いことはしない主義なんだ」

「…………まさか、あたしを騙すためのひとつの演技……?」

「普通そうだよね」

「………まぁ許せれない感じもするが助かったことにはかわりないし……」

「黒崎の彼氏さんは手伝えそうにもないもんね」

「え?」









――――――――彼氏?

私いたっけそんな奴、













「アレ、昨日一緒に店に居たのって彼氏じゃないの?あの軽そうな金髪くん」






…………………………。


佐野のことか、













「違う違う、佐野は友達。それにアンタよりは断然軽くないからある意味硬派だよ」







硬派つかピュアなんだけどな

好きな子にはフルに乙女だから







そんなことを言った私を観察してから試すように「佐野ってゆんだ。ソイツのことやけに思い入れしてない?」



ニヤリと笑うコイツのこの表情、嫌いだ。

そしてその予想はハズレ、私が佐野を?……ないな。うん、イジるのは死ぬほど楽しいけど












「残念だけど恋愛対象ではない」

「なんだぁ〜つまんない」

「どうして楓、アンタが残念がるの」

「だって……………」









その場に立ったまま机に手を添え、私の方にグン、と顔を近づける。

二人の間は約20cm、そしてまたあの嫌な笑み…










「そのほうが楽しいじゃん」

「どうゆうこと?」

「略奪愛とか他人の恋路めちゃくちゃにするのって楽しんだよねぇ、脆いもんが崩れるかんじでさぁ…」










クックッ、と妖しく心の底から楽しむような瞳

口元もそれと比例するように吊り上がる。











―――――――歪んでる。







 

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