《MUMEI》

「気に食わない。俺を所有するな」
アラタの首には鎖のついた首輪があてがわれている。
帰宅するとベッドに特殊な金具を付けられていた。

先日の夜歩きが早速バレたのだ。
陽炎がアラタの前に跪づく。


「逃げ出すだろう?」



「病院と変わらないじゃないか。もっと酷い。
外の世界を前に進めないなんて。」
アラタの襟をひんむく。
上の釦二つが跳ね落ちた。反動で首は横に振られ、肩が大きく開く。
すかさず体を壁際に寄せて身を守る。



「その痕は何だ。高柳樹なんだろう!昨夜、密会して予定にないことを吹き込んだ。」
陽炎は責め立てる。



「五月蝿いな、どうせ分かるんだ。全てがまやかしなんだって。」
誰に呟いているのか渇いた笑いを漏らし、ゴム手袋を嵌めた指が鎖を弄んでいる。
アラタの白い体に黒革の除菌首輪がコントラストをはっきり示していた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫