《MUMEI》
カツアゲ
縫った後頭部のとこの髪も、なんとか生え揃って来た頃

僕の趣味は、休みの日に、遠くの街までバイクを走らせ
その街の大きなゲームセンターで、コインゲームをすることだったんだ

7千円ぐらい使っちゃう日もあった

ゲームセンターの横には、フードコートもあって

必ずそこでお昼を食べてた
ある日、そのゲームセンターのトイレで
知らない奴らに声を掛けられたんだ

………なに?…カツアゲ…これ…

無視して行こうとしたら、腕を捕まれた

……早くしろよ、誰か来ちまうぜ!

見張り役が言った

なんか、ピンタされてたけど……

…以前なら、こんな不良たち、恐かったのに…

…恐くないや…

うるせー!ボケ!!

怒鳴ったんだ

殴られたから、殴り返してみた

拳が痛かった

こんなに痛いの、人を殴った手って

…だけど、そいつら逃げて行ったんだ

何だろう、殴られたけど、満足感があったんだ

そして、また、ゲームで遊んで帰ろうとした時だった
僕のバイクが…

倒れてて、シートは切られたみたいに…中身が見えてて

カウルも割れてた…

アイツらだ!

………悔しかった

タイヤの空気まで、抜かれてた

買ったとき、バイク屋さんで聞いた
陸送してくれるとこへ電話したんだ

直さなきゃ…

悔しいから、カスタマイズしたんだ

音がうるさいのは嫌だから、マフラーは静かなやつにした

外装も、派手なのは嫌だから
少しだけ、いじったんだ

シートもデザインが違う、革みたいな雰囲気のシートにした

ミラーや、レバーも、アルミのメッキに替えたんだ

スクリーンは、スモークのグラデーションにした

元よりカッコヨク、直したんだ

タイヤも替えた

そしたらカーブが楽になった気がしたんだ

そして、奴らを探す事にしたんだ

同じ場所に、バイクを置いたら間抜けだから
ショッピングモールの方に置いて、少し歩いてゲームセンターまで行ったんだ

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